心ごと

PCA(パーソンセンタードアプローチ)とは?

カウンセリングを学ぶとなると、まず初めに学ぶであろうPCA。しかし、そのわかりやすさの反面、誤解されやすいところがあります。

 

「オウム返しするだけでカウンセリングになる」「PCAはカンタン」という人がいる一方で、「PCAは人生観だ」という人もいて、さまざまな意見があります。なので今回は、PCAについて、誤解されやすい部分を中心にわかりやすく説明していきますね。

 

 

PCAとは?

 

PCAとは、Person Centered Approachの略です。もともとは非指示的療法から、クライエント中心療法、PCAへと変化していきました。

 

PCAを用いたカウンセリングがPerson Centered Aproch to Therapy(PCT)であり、PCAはカウンセリングよりも広い概念で使われます。カウンセリングの他には、エンカウンターグループ(EG)などがその代表ですね。

 

それもそうで、ロジャースはPCAという言葉をセラピー以外の領域でのアイデアに使ったと言われています。

真の自己と自己との出会いを促進することによって、社会全体がより人間的に変化するように働きかけると考えました。

 

つまり、PCAは人間観であり、かなり広い概念であることが分かります。

 

PCAの誤解について

 

PCAを人間観としてとらえると、PCAに対する誤解を解きやすくなります。

 

例えば、「この人に対しては実現傾向信じるけど、この人には信じない」ということになると、PCAの人間観を信じているとは言いにくいですよね。人間観なので、基本的にはどのケースにも同じスタンスで関わるほうが自然です。

 

つまり、よく誤解されるところですが、PCAはただの技法ではありません。傾聴スキルだけ磨いて、「私はPCAができます!」と簡単に名乗れるわけではないってこと。

 

「じゃあ何を学べば良いのさ!」と言われそうですが、PCAを学ぶのであれば、技法や態度を学ぶよりも先に、背景にある考え方について知る方が理解しやすいと思います。

 

まずは、PCAの基本的な人間観について説明していきますね。

 

PCAの人間観について

PCAでは、人には自分をよりよく実現していこうとする最も根源的な唯一の動因である実現傾向があるとします。

 

ジャガイモが太陽の下ではすくすくと育つように、生命体は自らをよりよく実現していこうとする潜在的な力をもっています。

 

しかし、人間の場合は少し複雑。人は成長していくにつれて、他人からの期待などで縛られるようになり、素直な自己実現が難しくなります。

親や教師、友人の求めることを引き受けてしまい、本当の自分を見失うなんて経験したことありませんか?これが、価値の条件づけ。

 

 

テストで良い点とれて偉いわねえ(暗のメッセージとして、良い点をとれないアナタは嫌い)

 

〇〇くんって優しいよね~(暗のメッセージとして、優しくないアナタは嫌い)

 

など、他人にとって都合のいい条件の元だけで認められる経験を続けると、自分のありのままを否定して、他人に認められるような行動に縛られてしまいます。これは、PCAでいう不適応の状態。

 

心理学の授業などでよく見る、この図で説明される概念です。

 

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ちなみに、よく誤解されるのですが、この図は理想自己と現実自己を表しているのではなく、自己概念と体験(経験)についての図です。

 

自己概念とは、自分についての概念。アイデンティティと捉えてもいいかもしれません。

経験とは、個人によって意識される可能性を持つ、瞬間瞬間に個人の中で生起しつつある潜在的なすべての事象のこと。平たく言うと自分に起こるすべての体験です。

 

心理的な不適応とは、自己概念が個人にとって重要な意味を潜在的に持つ経験を正確に知覚することができずに、この構造の中に取り入れることができない状態のときに生じます。

 

強固でかたくなな自己概念は、それと矛盾・対立する経験を否認するか、歪曲して知覚してしまうから。

 

例えば、「私は読書が大好き!一人でいるほうが楽しい!」と思っている人にとっては、クラブに行くなんてありえないわけです。クラブに行ってしまうと、読書が好きで、一人で過ごすことが好きな自分という概念が崩れてしまうから。

 

逆に、心理的に健康な状態とは体験に開かれている、と表現されます。つまり、自己概念と反する経験があっても、自己概念を柔軟に変化し、その経験を取り入れることができる状態。

 

さきほどの例でいうと、「一人で本を読むのもいいけど、たまにはクラブに行くのもいいかな」と認められること。

 

なので、心理的不適応状態の人に対しては、価値の条件とは関係ない、ありのままを認められる環境を提供することが必要になってきます。

適切な環境の条件下では、人は実現傾向に従って成長していくから。ジャガイモが日陰にあって育たないなら、光を与えてやれば良いのです。

 

この、適切な環境というのが有名な「治療的人格変化の必要十分条件」の6条件。今回は、その中でも中核3条件と呼ばれる自己一致・無条件の肯定的関心・共感的理解について説明していきますね。

 

PCTの6条件について

1.二人の心が心理的接触を持つこと。

2.Cl(クライエント)は不一致の状態にあり、不安定で不安である。

 

3.Th.(セラピスト、カウンセラー)はその関係の中で一致、統合している。

 

自己一致とは、自分の中に起きている感情に対して、ありのままに気づき、受けとめる姿勢のこと。

 

Th(セラピスト、カウンセラー)はCl(クライエント)との関係の中で、自分の心の中での体験に気づいて、ありのままの自分でいようとすることが大切となります。つまり、Thが体験していることと、意識していることとが一致しているということ。

 

Thが嘘偽りの感覚をもって話を聴いていても、Clは「なんだかおかしいな…?」と不信感を持ってしまいます。

 

 カウンセリングの中で、Thは自分の中に生じる感情を必要に応じて表現します。ただ、これはClとの関係の中で生じた感情に限られ、カウンセリング外の人間関係や状況に関する感情を表現するのではありません。

 

もしもクライエントに対して否定的な感情を持った際であっても、無理に自分の感情を否認したり無視したりするのではなく、純粋で偽りのない姿であろうとすることが大切になります。

 

4.Th.はclに対して無条件の肯定的関心を経験していること

無条件の肯定的関心とは、Clに対して、評価したりするのではなく、ありのままを認めてあげること。褒めたり、Clを良くしてあげようとするのもダメで、あくまでありのまま。

 

なぜかというと、不適応な状態のClは、価値の条件づけに縛られているから苦しんでいるわけで、その呪縛を取り外すためにはTh.が無条件に関わることが必要だから。

 

そのためには、Clを信じることが必要になってきます。

赤ちゃんがはじめて立つ過程を温かい目で見守るように、その人の成長を信じて見守ることが、無条件に、肯定的に関わることにつながるのではないでしょうか。

無条件の肯定的眼差し、と言い換えてもいいかもしれません。

 

5.Th.はclの内的照合枠を共感的に理解しており、この経験をclに努めようと努力していること

内的照合枠とは、その人固有の世界の捉え方のようなもの。この内的照合枠を踏まえて、Th.はあたかも、Clが感じているように共感的に理解することが求められます。

 

ロジャースは、個人の人格を把握する上で、個人の内的照合枠から見ていこうとしました。

つまり、人格を個人の外側・外的な基準に照らして判断するのではなく、その人の知覚する世界から理解しようとしました。

 

例えるなら、めちゃくちゃ綺麗なモデルさんだから「顔のことで困ってはいないだろう」と決めつけるのではなく、モデルさんなりの美意識の悩みを捉よう、とすること。

 

また、ここでは共感的理解と書いていますが、共感的理解と共感は区別されるものです。

 

共感的理解とは、共感した上で、理解しようと努めること。共感だけならClの存在は無関係であり、理解という要素が加わって初めてTh.の行為となります。

 

ロジャースはオウム返し(リフレクション)するだけで共感していると批判されましたが、実はそうではなく、Clを理解しようとした結果としてリフレクションが出てしまうのだと言います。

 

「自分はClの感情をreflectionするのではなく、自分の理解が正しいか確かめている」とロジャースは述べています。

 

 

例えば、「~~が不安なんです。」と言われても、そわそわするのか、ドキドキするのか、押しつぶされそうなのか、全然わからないですよね。

 

この不安についてもっと聞かせてもらおうとすると「不安なんですか?」と、Clの言葉を使って正確にリフレクションする必要が出てくるのです。共感するだけのリフレクションと、共感的に理解するためのリフレクションでは意味が違います。

 

共感と口で言うのは簡単ですが、共感的理解をしようと思えば、Clから見た世界をあたかも同じように感じようとし、さらにClだけでなくTh内部の感情にも目を向けること、フェルトセンスを感じることが必要になってきます。

 

そう考えると、一口に共感と言ってもとても深い行為であることが分かります。

 

6.Th.の共感的理解と無条件の肯定的配慮が最低限clに伝わっていること

 

まとめ

ロジャースは中核3条件の関係について、共感的理解のベースには無条件の肯定的配慮があり、さらにそのベースに自己一致があるとしました。

 

3つバラバラの概念ではなく、深いところではつながっているということ、それはきっと、ロジャースの人間観が基礎にあるからではないでしょうか。

 

以上、わかったような口ぶりで話してしまいましたが、私もまだまだPCAを理解しきれていないので、修正点などあれば教えていただけると幸いです。

 

参考文献

人格およびその変化をめぐる理論的課題――ロジャース派人格理論の推移の検討を中心として―― 末武康弘 

 

Rogersの中核条件に向けてのセラピストの内的努力――共感的理解を中心に―― 中田行重 心理臨床学研究第30巻第6号 2013

 

私とパーソンセンタードアプローチ 伊藤研一・ほか