心ごと

クライエントの期待に応えられない時の対応

カウンセリングの中で、どうしてもクライエントの期待に応えられない場面というのは出てきます。しかし、ここで機械的に断ってしまうと、クライエントの気持ちを傷つけてしまうことにも繋がりかねません。クライエントの期待に答えられないケースの理由についてしっかりと理解し、うまく断れるよう、ここでは理由を踏まえて詳しく説明していきますね。

 

クライエントの質問に答えてはいけない理由

カウンセリングを続けていると、クライエントがカウンセラーに興味を持ち、「先生に彼女はいますか?」「先生はこの話を聞いてどう思いますか?」などの質問をされることがあります。しかし、カウンセリングにおいては、カウンセラーはクライエントの質問に答えることは控えなければいけない重要な理由があります。その理由について説明していきますね。

 

クライエントの質問の意図を考える機会を奪うから

クライエントがカウンセラーに質問を投げかけるときは、何か意図があることが考えられます。

 

例えば、「こんな自分の話をずっと聞いていて、イヤな気持ちになりますよね?」という人は、自分に自信がなく、相手が自分をどう思っているのか不安で確かめたい気持ちがあることが考えられます。

 

しかし、ここで「そんなことは無いですよ」と返してしまうと、そこで会話が終わってしまい、クライエントの悩みについて考える機会を逃してしまいます。

 

相手の質問の意図を読み取った上で、安易に質問に答えてしまうのではなく、「私がどう思っているのか気になる気持ちがあるんですか?」など、質問に質問で返すような対応が求められます。

 

中立的な立場でなくてはならないから

カウンセラーはクライエントに肩入れしすぎることなく、中立的な立場であり続けなければなりません。クライエントに「この話を聴いて、相手が完全に悪いと思いませんか?」など、評価的な質問をぶつけられた時は要注意です。

 

ここでクライエントに同意してしまったり、変に相手のことをかばってしまうと中立的な立場が崩れてしまいます。どちらに肩入れしすぎるでもない、中立的な立場のカウンセラーだからこそクライエントの話をしっかりと聴くことができるのです。

 

鏡としての役割が果たせなくなるから

カウンセリングはクライエントの為に使われるべき時間であり、セラピストもまたクライエントの為になる存在であるべきです。

クライエントの内省を促すために、カウンセラーは鏡のように、クライエントの心を映し出す存在でいなくてはなりません。

 

質問に答えることで、カウンセラーの個人的な情報がカウンセリングに持ち込まれることで鏡の機能も薄れてしまいますし、カウンセリングが二人の時間になってしまい、クライエントの為の時間ではなくなってしまいます。

 

行為でクライエントの期待を叶えるべきではない理由

質問に答える他にも、カウンセラーが控えなければならないことがあります。クライエントにある行為を求められた時です。

 

例えば、

「私は今まで、どんな男性にも受け入れられてこなくて、自身がないんです。でも、先生にやさしく話を聴いていただけると、安心して、自分に自信が持てそうです。先生が私を抱きしめてくれたら、きっともっと自信が持てると思います。」

 

など、異性との接触に関するものがよく例にあげられます。また、学校などの教育領域では、生徒が殴ってきたり、べったり甘えてきたりすることもあるでしょう。

 

このような場合、カウンセラーが行為でクライエントの期待に答えることはNGとされています。それはなぜなのか、その理由についても考えていきましょう。

 

制限がなくなるから

クライエントとのカウンセリングをより効果的にするために、ほとんどのカウンセリングでは制限が設けられています。そのため、この制限がなくなると、カウンセリングの効果が大きく損なわれてしまいます。

 

「カウンセラーとクライエントが触れ合ってはいけない」というのは、触れてしまうことで二人の間に情緒的な感情が生まれてしまい、それ以降の純粋なカウンセリングが難しくなってしまう為に禁止されています。

 

カウンセラーの役割ではないから

カウンセラーは対話を通じて、クライエントの心を癒やす存在であり、身体的な接触を用いて癒やす存在ではありません。

 

クライエントの行為に応えられない時にどうするべきか?

じゃあ、いったいどう対応すればいいのかと思われたかもしれません。ここでカウンセラーができる対応としては、行為を受け止めるのではなく、感情を受け止めることがあげられます。

 

抱きしめてほしいと身体的な接触を求める人は、それ以前に抱きしめてほしい気持ち、抱きしめてもらうことで何かを埋めることができることを期待する気持ちがあります。

 

カウンセラーが扱うのは、行為に表れている表面的な欲求を満たすことではなく、心の奥の根本的な気持ちを感じとり、理解し、共感することです。クライエントの満足のいくほど理解してあげることで、自然と前に進む力が湧いてくるものだから。

 

行為で期待に答えることは簡単。行為の奥にある気持ちに気づき、しっかりと支えてあげれば、身体で満たそうとしなくても、クライエントは満たされた感覚を持つことができるのです。