心ごと

自己心理学とは?コフートの理論に学ぶ、自己愛の原因について

自己心理学とは、精神分析家であるコフートの自己に関する臨床的知見をもとに作られた理論のことです。1960年台から起こり、特にアメリカでは自我心理学と並び独自の学派を形成しました。

 

自己心理学を学ぶことで、自己愛性パーソナリティ障害や自己愛という概念について理解しやすくなります。この記事では自己心理学の始まりから理論の解説までしていきますね。

 

自己心理学の始まり

自己心理学はもともと、コフートの臨床的な経験から始まっています。コフートは自己愛性パーソナリティ障害の特徴を持つ患者との治療における行き詰まりについて考察したのがきっかけです。

 

コフートは、患者がカウンセラーに向ける独特の抵抗を抵抗と見なすのをやめて、自分自身をどう体験しているのかを語ってもらいました。すると、その過程でカウンセラーが共感的に同調する態度によって治療が急速に進むことに気がついたのです。

 

さらに、コフートは患者がカウンセラーをどう体験しているのか、という【自己対象体験】と呼ばれる要素が治療を左右すると考えるようになりました。そこから、コフートは自分の理論を構築していきます。それでは、コフート理論について説明していきますね。

 

コフート理論について

自己心理学では、【自己対象】と乳児との関係性が重要とされています。

【自己対象】とは、乳児と母親がまだ分化した存在ではなく、乳児が自分の一部として感じる母親であり、また、乳児に共感的な環境を与える母親のことをいいます。

 

そして、【太古的自己対象ニード】と、【理想化対象】という2つの欲求が自己対象との関わりで満たされることで、乳児的(太古的)自己の自己愛が適切に発達していきます。

 

【太古的自己対象ニード】とは、乳児と母親がまだ分化した存在ではなく、乳児が自分の一部として感じる母に対する、乳児自身の心理的な欲求を感じ取ってもらい満たしてもらう期待のこと。

 

【理想化対象】とは、100%完璧な母親像みたいなもの。

 

この欲求を満たすために、自己対象としての母親が乳幼児に対して果たすべき2つの役割があります。それが鏡としての機能と、理想化の対象としての機能。詳しく解説していきますね。

 

鏡としての機能

乳児的(コフートで言う太古的)な自己は、生まれながらにして生きることへの確固とした自信を持っていて、その生を支える環境を当然のように期待しています。

「俺様は生きるに値する人間なんだ、腹が減ったらミルクがでるしお漏らししたらおむつ替わって当たり前だぜチェケラ」みたいな万能感。

 

自己対象としての母親は、乳児の万能感を鏡のように移し返す役割が求められています。乳児はまだ自分のことを自分で見ることができないので、相手が見る自分を通して自分を知る段階が必要となるのです。鏡を見て初めて自分の顔がわかるみたいな。

 

乳児にとって共感的な環境のもとで、誇らしげに展開する乳児の万能的な自己を映し出すことで、その展開を促進する機能があります。逆に、鏡が曇ってたら自分の顔が汚れてるのかと錯覚しちゃうよね

 

そうした共感的な自己対象が与えられて始めて、自己は幼児的な自己対象ニードから抜け出し、より成熟した形の自己対象から自己愛的な満足を得られるようになるのです。

 

理想化の対象としての機能

成長とともに、「世界はなんでも思い通りになるぜ」みたいな万能感は現実とのすり合わせで失われていきます。そこで、幼児は成長とともに失われゆく万能感をなんとかつなぎとめようと、自分の万能感を理想化対象に託し、それと関わりを持ち続けることで万能感を保持しようとするんです。

 

しかし、100%完璧な親はいません。適切な条件のもとで、子供は理想化された対象(イマーゴ)に対して共感不全による失望を覚え、理想像はだんだんと現実的なものに訂正、修正されます。

 

それに伴って理想化された自己対象への自己愛的リビドー備給は撤回され、理想化された自己対象の内在化(変容性内在化)に進みます。

変容性内在化とは、「以前は対象により遂行されていた機能のあるものを遂行する能力を獲得すること」。

 

しかし、理想化できる対象に恵まれず、適切な内在化が行われなかった場合、小児は幼児的(太古的)な自己対象に固着したままで、いつまでも心的構造の欠損部分を埋めるために対象に依存、渇望し続けることになる。これは自己愛的パーソナリティ障害に特徴的な状態。

 

これら2つの、自己対象が果たす役割は重要で、これらの段階を踏まないと前に進むことはできません。そのため、セラピーの中でカウンセラーがクライエントの自己対象となり、治療的に活性化する役割を果たさねばなりません。それぞれ、鏡転移と理想化転移として扱われます。

 

自己愛性パーソナリティ障害の過敏な心の背景

自己愛性パーソナリティ障害は、幼少期から続く無意識的な誇大イメージを持っている状態です。幼いままの万能感的な自己像と、現在の自己像とのギャップが原因となり、対人関係において敏感になったり不安になったりしてしまいます。自己愛の状態は、高すぎる目標設定や、突然の大胆な行動に反映されます。